"GIRLS" ★★★
"GIRLS" S1-6を見終えました。
4人の"女子たち"の日常、24-28歳にかけて成長して行く姿を描いています。よくテレビに出ている人にありがちな、美容外科手術を施しているような感じの人が殆ど出て来ないが新しいです。
4人の女子は中の人は皆社会的に成功したセレブレティを親に持ち、主役ハンナ役レナ・ダナムは24歳で発表した映画「Tiny Furniture」で注目をあつめ、このドラマの制作につながったそうです。
始めは「SATC」のミレニアル世代VER.かと思って観ていましたが、アンダーグラウンドな風情が常に漂います。
レナ・ダナム(ハンナ)とジェマイマ・カーク(ジェッサ) は私立の小学校?からの同級生だそうですが、お二人のご両親はアーティストであり、コンサバというよりはリベラル的なセレブ学校(日本で言うと玉川学園?)出身なのでしょうか。バーグドルフに通うアッパーイーストのコンサバお嬢様という感じではありません。グリーンポイントなど、日本で言うと中目黒が舞台といったドラマです。SATCやゴシップガールが好きな人向けではないかもしれません。
嘔吐のシーンが多かったり結構グロいので視聴には注意です。
作品としてというよりは、「ミレニアル世代のリベラル系セレブたちの等身大の姿を観る」意味で視聴するのが楽しいのかなと思います。
海外ドラマにしては珍しく、殆どのメンバーはラストのS6までちゃんと出演しており、途中で居なくなったりもしません。ただ、ストーリーは結構場当たり的です。状況がいきなり変わったり話が飛躍し「あれ?エピソードをひとつ飛ばして観てしまったかな?」と思う事はしょっちゅうですが、そのうちそういうものだと慣れます。S6の最終話もかなりあっさりしすぎていて驚きます。
●良い点
・マーニー以外はみんなぽっちゃり体型。共感がもてます。
・ジェッサ役のジェマイマ・カークが本当に魅力的。中の人も実際にセレブ御用達ヴィンテージショップのお嬢さんだそうですが、若さゆえの退廃というタレントが素晴らしいです。
・特にS6までしっかりと描かれているマーニーと、ショシャンナの成長にぜひ注目してほしいです。
・ハンナの両親、祖母や伯母たちがとても良い。
・アランが人間味があってかっこいい。
・ショシャンナの東京赴任編が、「東京愛」に溢れている。ロストイントランスレーションではなく、コミュニティの中にエンゲージした人の目線でしっかり描かれています。
・作中にでてくる音楽が良い。
ハンナがバスタブでオアシス?歌っているシーンがよかった。
音痴と言われてたけど、ハンナ歌うまい。
●疑問点
・特にS4あたりからハンナの見た目が汚くなっていきます。さらにシラフにもかかわらず人の尊厳を無視したり、人をかなり最悪な形で裏切るような行動をとるため痛すぎて観ていられません。アランを田舎まで迎えに来させておいて、車が故障したからといって彼を放置して別の車に乗るとか普通あり得ないし、普通なら絶交モノかと。ただ「運転手にお礼にブロージョブしてあげる〜事故」という流れはコーエン兄弟の映画「バーバー」のオマージュなのかな?と思いました。
・ハンナ以外にも色んな登場人物が嘔吐します。本当観てられません。
・S2以降のハンナの設定の矛盾がすごいです。
特筆すべきは、ハンナがモテまくること。しかもなぜか全員イケメン。何故かとおもったらハンナの中の人が制作側だったからなのですね。そうとしか思えないくらいなぜこの子だけイケメンとご縁が続くのかと違和感があります。 ちなみに、ハンナ以外の登場人物たちはきちんとブサメンさん(失礼)としっかりベッドシーンを演じてくれています。
・英訳(amazonプライムで観ました)に難が。
特にカルチャーが売りのドラマなのに、台詞ででてくる固有名詞(店名、ブランド名、人名、曲名等)を出さず「一流ブランド店」「有名人」みなたいな訳になっているため、制作側の意図が半減する。(他のドラマも訳もそうですが。fargoでも「ジンジャーエール」を「ジュース」と訳していて、そこまで意訳しなくても良いのになと思います・・・)
・ハンナとアランの恋愛は期待して最後まで観ても何も報われないので飛ばしてよい気がします。
最後に
マーニーが、”救いが無い女の子”見事に演じきり、そしてとても良く描かれています。
マーニーは母からネグレクトに近い扱いを受けた愛着障害をもっています。外部教育はちゃんと受けたのでマナーもちゃんとしています。「高嶺の花的な非の打ち所の無い完璧な美人」なのに、根っこにある主体性や自尊心が低いせいで自分を安売りつづけしまっています。
仕切り屋で口うるさい性格が災いし、一番しっかり者で頭も良く、美人で努力家なのに、登場人物たちの中で唯一ろくな仕事にも男にもありつけません。。。涙
美人なのに人生が最悪。そしてドラマ最後まで最悪のまま終わってしまうのです。
とうとうアパートの家賃が払えなくなり、母親から貰ったネックレスや父親から貰ったピアスを換金しようと質屋的な貴金属店に行ったところ、店主に「この店に売りにくるのは底辺ばかり。あなたも人のせいばかりにしている」と指摘されます。
なぜなら、母に「代々の形見の純金ネックレス」と言われたネックレスが実はメッキだったり、父に「ダイヤ」と言われプレゼントされたピアスはガラスだったため、マーニーが取り乱すからです。
しかし。。。
両親最悪過ぎです。マーニーはきっとネックレスやピアスを何年も大切に身につけてきたのでしょう。私自身がもし、両親にこんなことされたら??酷すぎて想像ができません。とにかく惨めすぎます。惨めすぎるせいで現実を認められず、周囲に甘えられないマーニー。
S6でハンナの母親はマーニーの進路を心配しますが、「ロースクールに行くかも」というフワフワとした答えしか言えません。
マーニーさん、ロースクールに行くお金はどこから調達するの?ギャラリースタッフすらクビになるのに、ロースクールやり切れるのかな?その後も法曹界で働けるの?日給400ドルのホステスの仕事でも良いから変な男や親からは自立して自分のために生きたら良いのに。。。
小姑のようにマーニーを心配してしまわずにはいられない、とても魅力的な作品でした。ハンナ以外の登場人物はきちんと軸があって魅力的に描かれています。ご自身が主人公になっていないレナ・ダナムさんの作品も、ぜひ観てみたいです。