fuiuuopik’s blog ネタバレあります。ご注意ください。

海外ドラマの感想を備忘録的に書いています。おこがましくも評価をさせていただています。評価は★「時間の無駄であった」★★「お勧めはしない」★★★「視聴を勧める」★★★★「観ていただきたい」★★★★★「是非是非観ていただきたい」となっています。なお、★無し、は「視聴に耐えられなかった(スルーをお勧めする)」ものになります。

FARGO S1 ★★★★★

FARGO S1です。
いま4回目を見終えました。
私の中の海外ドラマ最高傑作です。

 

●「運の尽き」

E10で、登場する狼。トムハンクスの息子がマルヴォの隠れ家を見つけたきっかけがオオカミですが。西洋で狼は「悪魔の手」を示唆するようです。マルヴォはトムハンクスの息子に隠れ家が見つかってしまった時点で、もう運が尽きていたのでしょう。トムハンクスの息子がいなくても、狼に食い殺されていたかもしれません。足を損傷したマルヴォは、窓に狼を見つけた時に微笑みます。「もう殺しを辞められる」という安堵感だったのかな?と勝手ながら理解しました。

 

●「足るを知る」「君子危うきに近寄らず」
悪運の強さで難局を乗り越え、マルヴォのお陰で?今までにない成功を掴んだレスター。ラスベガスでマルヴォに遭遇します。自尊心の極みに達していたレスターは、誤った行動を起こします。あろうことか、たまたま出くわしたマルヴォにわざわざ話しかけにいくのです。マルヴォは「去れ」警告しくれて、ここで冷静になり立ち去るチャンスはありました。しかしここはやはり生来のダメな男であるレスター発揮です。エゴを優先し、マルヴォに誉められたくてw追いかけます。これがバーの人にメッセージカードを渡してもらうとか、なぜマルヴォの事情を配慮せずにスマートに行動できなかったのか・・・。そこがまさにレスターなんでしょう。

○モーリー

祖父、父と立派な警官だった娘で、自身も警官になります。
署長が殺される前は、ダイナーで「殺しが発生したの♬」と目をキラキラさせながら少々不謹慎かと思えるような態度をとっていましたが、署長が殺さてからキャラが全く変わり、本領発揮、淡々と職務を遂行します。ワイヤーのマクノルティのように、邪魔な上司がいてもきちんとレポートラインを守って行動します。スタンドプレイをしなくとも、「まじめに職務を行っていれば報われる」という象徴のような人です。最後は署長になります。グレタも警官になってほしいな、と思いながら見ていました。

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このドラマは叙情的な景色、スーパー王のストーリーも素晴らしいし、もはや漫才コンビとしか思えないFBI捜査官など、見事なコンテンツが盛りだくさんです。それらはすべて落語の登場人物のような「人間らしさ」に溢れています。

特筆すべきはレスターのずる賢さと異常な悪運の強さです。
それはマルヴォと出会ってから開花されたものなのでしょう。優秀な弟の陰で、田舎でうだつの上がらない夫として人生を終えるより、人生のほんの一瞬でも、注目を浴び成功し、全米1位の栄冠を掴んで積年の恨みがある弟を陥れ、警察を手こずらすような人物になったのは良かった様に思います。それはマルヴォがいてこそ、もっというとヘスがいてこそ、だった様におもいます。人生何が起こるか分からないなというロマンをレスターから感じます。

マルヴォは「自分には邪悪な資質もある!」と、謙虚に自己を見つめ、認める人を攻撃対象にはしない人だと思います。善良ぶっていたりする偽善者に対し、己の邪悪さをしらしめるために神が使わした使者のようにも思え、大量殺戮社なのですが、私には思いっきり憎めません。

とにもかくにも登場人物において一番悪いやつはレスターなんだと思います。彼はほんっとに息を吐く様によく嘘をつきますし「キレやすく、他人を操作し、協調できない」という典型的なソシオパス体質です。マルヴォはレスターが抱えていた幻なのかとも思えます。ソシオパスなレスターの対極にあるのは、モーリーなのです。

レスターやパールは救いようがない人たちです。ズルをして、ねたんで、ひがんで。。。そして自分の能力のなさ、努力不足をすべてを他人のせいにする。こういうことは私たち、周囲にも日常的に存在し、人の邪悪さや弱さの象徴のような登場人物たちです。レスターとパールは似た者同士の共依存だったのかもしれません。

しかし一代で運輸会社を立ち上げるようなガッツのあるヘスには、彼らのような弱さ丸出しの人間は虐めの対象になるのでしょう。勝手にレスターの母親に毒母的な匂いを感じてしまいますが、ヘスはそれ以上にめちゃくちゃな家庭に育ったのかもしれませんし。

レスターがチェズの奥さんから「あなたの人生はこれから良い事ばかりあるし、あなたはそれに値する人だよ」と言われキスされた時の嬉しそうな顔。単に美人にキスされたからだけではく、「自分は幸せに値する人物だと女神から認めてもらった嬉しさ」からなのでしょう。レスターが呪縛から解き放たれるシーンはとても印象的でした。

 

さて、レスターは必然だと思うけど、その他の主人公はその時々の選択でその後の人生がかわります。地下室のポスターにあるwhat if・・・
E1でまだ存命の署長に、壁の色をあーでもないこーでもない、極めつけには「白い壁に白いペンキを塗りたい」などと訳の分からない事をいう天然ちゃん妊婦。激務の旦那に配慮したら、妊婦とはいえそんなわがままは言えたのでしょうか。あんなアホ嫁がいなかったら署長はペンキ屋に立ち寄る事もなく、殺されて無かったのではないか。でもいつかアホ嫁の意味不明な捜査妨害のため殺されていたかもしれません。レスターの2番目の妻も、最初はただの可愛くて優しくていい子、にしか見えないのですが、その時々で都合の良い男をとっかえひっかえしてきた様にも見えなくもありません。不動産屋のオーナーともデキていたのでは??

私自身はイケメンが苦手で、彼女の様にフツメンのかたに「一目惚れ」したことが何度かあり、ポジティブに喜ばせようと思いそれを告白した事もあります。しかし彼女がレスターに「一目惚れだった」と言うシーンを観ながら、本来コンプレックスの塊の様なレスターみたいな人に「一目惚れした」と告白したところで胡散臭いと思われてしまうだけなのだろう、と客観的に眺めていました。

ちょっと脱線してしまいました。
誰でも自尊心に問題が無い人はいません。しかしレスターみたいに、邪魔者が居なくなり、自分にスポットライトがあたることが人生で怒るかもしれません。もし私が今後そんな風に呪縛から解き放たれる機会をいただいたとしても常に謙虚に、「足るを知る」姿勢で、自滅しない人になりたいです。